医学部入試では学力試験だけでなく、面接も合否に大きく影響します。
「質問に上手くこたえられるか心配」「面接の失敗で不合格になったら…」と不安に思う方もいるでしょう。
面接では志望理由や理想の医師像などの頻出質問に加え、変わった質問への対応力も求められるもの。
しっかりと対策をしなければ、志望校に合格することは難しくなります。
本記事では、医学部の面接のポイントや具体的な対策方法について詳しく解説します。
目次
医学部の面接の目的と評価ポイントについてご紹介します。
対応方法のヒントになるため、理解した上で面接に臨みましょう。
医学部の面接が必要とされる理由は、医師としての適性や資質を確認するためです。
面接では「医師になりたい」という強い志望動機と情熱が評価されます。
というのも情熱が不足していると、厳しい学業やその後の研修を乗り越えられない可能性があるからです。
そのため、面接を通じて「受験生が本当に医師になりたいのか」という意志を見定めます。
以下も医師には重要とされる適性・資質のため、確認される傾向です。
医師は患者や同僚と適切に意思疎通を図る必要があるため、人の話を聞き取ったり、相手に伝わりやすい言い方で伝えたりする能力も重要視されます。
また、人の話を理解するだけでなく、周囲の人々と問題なく接することができるか、人の考えに共感できるという点も医師として欠かせません。
仕事柄、倫理観があるかも、将来の医師を育てる大学側からすると重要なポイントとなります。
医療や生死がテーマの質問に対して、意見・考えのすばらしさ以前に倫理的に問題のある発言があると大きく減点されるでしょう。
医学部受験の面接方式は大学によって異なりますが、主に以下の4つの形式があります。
個人面接 | 受験生1人に対し、面接官が1人以上で行う形式。 志望理由や医師としての適性、自己PRなど個人的な事柄について深く掘り下げた質問がされます。 |
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集団面接(グループ面接) | 複数の受験生に対し、面接官が複数で行う形式。 他の受験生の発言を聞く態度や協調性、コミュニケーション能力などが評価されます。 |
集団討論(グループ討論) | 複数の受験生にテーマが与えられ、討論を行う形式。 論理的思考力、コミュニケーション能力、リーダーシップなどが評価されます。 |
MMI(Multiple Mini Interview) | 複数の短い個人面接を繰り返す形式。 各面接で異なるテーマが与えられ、受験生の多面的な能力や適性を評価します。 医療倫理に関する問題や、コミュニケーション能力を問うシチュエーション問題などが出題されます。 |
医学部の面接でよく聞かれる質問例をご紹介します。
聞き方が違っても、確認したいポイントが同じ質問もあるため、面接官が確認したいことを考えて意図に沿った回答ができるようになりましょう。
医学部の面接では、以下のような形で大学の志望動機が問われることが多いです。
「なぜ医師を目指そうと思ったのですか?」
「数ある大学の中で、なぜ本学を選んだのですか?」
「医師を目指すきっかけとなったエピソードを教えてください。」
医師を目指す理由と大学選びの明確な動機が求められます。
例えば、「幼少期に家族が病気になり、その際に医療従事者に助けられた経験から、自分も人々の命を支える仕事に就きたいと思いました」といった具体的なエピソードが効果的です。
また、大学については「貴学が地域医療に力を入れている点や最先端の研究環境に魅力を感じました」といった形で、大学独自の特徴や理念に触れると良い印象を与えられるでしょう。
面接では受験生が目指す医師の姿に関しても聞かれます。
「どのような医師を目指していますか?」
「理想とする医師像を教えてください」
理想の医師像に関する質問の回答には、具体性と現実性が求められます。
例えば「患者一人ひとりに寄り添い、信頼関係を築ける医師になりたいです」といった回答に加え、「そのためにコミュニケーション能力を磨き、幅広い知識を身につけていきたい」と将来のビジョンを含めて答えると効果的です。
また、自分が影響を受けた医師やエピソードを交えることで、熱意をより伝えやすくなるでしょう。
「もし苦手な患者さんがいた場合、どのように対応しますか?」という質問も頻出です。
冷静さやプロフェッショナリズムが評価されます。
例えば「苦手意識を持つのではなく、その背景や状況を理解しようと努めます。患者さんの立場に立って話を聞き、信頼関係を築くことが大切だと考えています」といった回答が望ましいです。
「感情的にならず、冷静に対応するために自己管理も徹底します」と付け加えることで、誠実さや成長意欲をアピールできます。
医療への関心の高さや倫理性を確認する質問も、面接では聞かれる傾向です。
「最近関心を持った医療ニュースは何ですか?」
「チーム医療についてどう考えますか?」
「安楽死や臓器移植についてどう考えますか?」
医療ニュースの質問では、自分が興味を持ったニュースの背景や影響について説明することが求められます。
例えば、「新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う医療現場の負担」などを挙げ「そのニュースに関心を持った理由」と「医師としてどのように関わりたいか」を具体的に述べると良い印象を与えられます。
「チーム医療についてどう考えますか?」という質問では、協力の重要性や課題について触れることがポイントです。
例えば、「多職種が連携することで患者中心の医療が実現し、医療の質が向上する」と述べたとします。
そして、「コミュニケーション不足や役割分担の曖昧さといった課題があるため、情報共有や環境改善が必要」と具体的な解決策を示すと説得力が増すでしょう。
「安楽死や臓器移植についてどう考えますか?」という質問では、生命倫理への理解とバランスの取れた意見が求められます。
例えば「安楽死は患者の自己決定権を尊重する一方で、生命への敬意を忘れてはならない」と述べることで、自分なりの見解を具体的に示すことが大切です。
いずれも、医療に対する考えや問題点に関して自身なりの考えがないと回答は難しいでしょう。
勉強の合間に医療系のニュースに触れて、自身の考え・意見を持つようにしてください。
医学部の面接では、自己分析ができているかの質問も頻繁に出題されます。
「自分の長所と短所を教えてください」
具体的な例を挙げて説明することが重要です。
長所については自分が得意とする点や他者から評価された点を具体的に述べます。
「責任感が強く、責任を与えられた際、必ず最後まで見通し、完了させることを心がけています。例えば、学校のプロジェクトリーダーとして、チームメンバーと協力し、計画通りに進めることができました」といった具体的なエピソードを挙げると良いでしょう。
一方で、短所については自分が改善したい点を認識し、具体的な改善策を示すことが求められます。
例えば、「私はストレスを感じると集中力が落ちることがあります。そこで、ストレス解消のために運動や瞑想を取り入れています。これにより、精神的な安定を保ち、集中力を高めることができています」
といった形で短所に対する改善策も併せて説明することで、自己認識の深さと成長意欲をアピールできるでしょう。
「尊敬する人物はいますか?」という質問は、受験生の価値観や人柄を理解するために出題されます。
尊敬する人物については具体的な人物を挙げるだけでなく、人物の背景や業績を理解していることを示すことが求められます。
例えば、尊敬する人物として「祖母」を挙げる場合、祖母の優しさや強さを具体的なエピソードを通じて説明することが効果的です。
「祖母はとても優しく、いつも私を助けてくれました。私は、祖母のように困っている人を助けられる医師になりたいと思っています。彼女の強さや優しさを学び、医師としての資質を身につけたいです」
というように尊敬する理由を自分の言葉で説明することで、自分の価値観を伝えられます。
受験生がどのような経験を通じて成長したかを確認するために出題され、回答の際は具体的な経験を挙げることが求められるでしょう。
例えば、高校時代にサッカー部に所属していた場合は、
「私は高校時代、サッカー部に所属していました。試合で負けたときも次の試合に向けてチームと一緒に練習を重ねることで、根気強さと継続力が身につきました。この経験を通じて、医師としても患者さんに寄り添い続ける姿勢を大切にしていきたいと考えています。」
…というように、その経験から得た学びを医師としての資質と結び付けることが重要です。
医学部の面接では、併願校の有無についても尋ねられる傾向です。
正直に答えることが基本ですが、回答の際にはいくつか注意すべき点があります。
あまり多くの学校を挙げると「どこでもいいのでは?」と思われる可能性があるため、注意してください。
また、併願校を選んだ理由については学びたいカリキュラムや設備など、学習面に着目して答えることが望ましいです。
地方の国公立大学では、卒業後もその地域で医師として働く意思を問われることがありますが、自分の意思を明確に示すことが重要です。
浪人や再受験を選んだ背景や過ごし方を具体的に説明することが求められます。
例えば、
「現役時代は基礎学力が不足しており合格に至りませんでしたが、浪人期間中に計画的な学習を重ね、苦手分野を克服することができました」といった形で、失敗から学んだ点や成長した部分を強調することが重要です。
また「どうしても医師になりたいという強い志があり、目標達成のために再挑戦を決意しました」といった熱意を伝えることで、前向きな姿勢をアピールできます。
「単なる勉強不足」や「なんとなく浪人した」といった曖昧な理由は避けましょう。
医学部の面接では、最後に「質問はありませんか?」という問いがなされることが多いです。
面接官に「興味がない」と思われる可能性があるため、事前に質問内容を準備しておくことが重要です。
大学や医学部の特徴、研究内容、教育方針などについて尋ねると良いでしょう。
ただし、公式サイトを調べたらすぐにわかるような質問はNGです。
具体的な面接対策の方法について解説していきます。
面接対策の1つとして、志望校の情報収集があります。
情報収集で大学の特徴を把握し、大学が目指す医療や研究のトピックを知ることで、面接で大学に合った志望理由を述べやすくなります。
おすすめの情報収集は、以下のとおりです。
予備校の説明会では複数の大学の情報を一括で得られるため、医学部受験全体の流れを理解するのに役立ちます。
一方で、個別説明会では大学の特徴や教育内容を深く理解できるため、面接対策に有効です。
大学生活や医療現場といった、生徒側のリアルな様子を知りたいなら、在学生や卒業生に話を聞きましょう。
模擬面接も面接対策で重要なため、事前に受けておきましょう。
実際の面接に近い環境で練習することで、緊張感や雰囲気に慣れられます。
改善点が見つかることも模擬面接の大きな利点です。
模擬面接の結果を分析することで、自分の弱点や改善点を発見できるでしょう。
模擬面接を重ねることで、本番への自信を高めることも可能です。
面接ノートを作成することも、面接対策として非常に有効です。
自分の考えを言語化する練習になり、本番での応答力を高めることができます。
面接ノートを実際に作成する際は、頻出質問の洗い出しから始めます。
過去の面接でよく聞かれた質問をリストアップし、各質問に対して自分の考えを具体的に記述してみましょう。
作成した回答からキーワードを抽出して覚えることで、本番での応答がスムーズになります。
自己分析も行って自分の長所・短所を分析し、自己PRや志望理由に繋げられるようにしてください。
面接で失敗しないための注意点をご紹介します。
面接対策も非常に重要ですが、実際の面接で注意したい点をおさえておくことも大切です。
面接では、暗記した答えをそのまま話すことは避けるべきです。
暗記した内容を棒読みすると、面接官に「本当に自分の考えなのか?」と疑われる可能性があります。
面接官が求めているのは、受験生自身の素直な考えや価値観です。
そのため、事前に模範解答を準備することは大切ですが、丸暗記するのではなく自分の言葉で話せるように練習することが必要です。
例えば、志望理由についても単に「医師になりたいから」と言うだけではなく、自分が経験した具体的なエピソードや背景を交えて説明することで説得力が増します。
また、暗記した内容をそのまま話すと、質問の意図に柔軟に対応できなくなることもあります。
面接では予想外の質問も飛んでくるため、臨機応変に答える力を養うことが重要です。
自分らしさを伝えるためにも、暗記ではなく自然な会話を心がけましょう。
面接では、嘘や誇張は厳禁です。
面接官はプロフェッショナルであり、受験生が話している内容が本当かどうかを見抜く力があります。
自分を良く見せようとするあまり事実と異なることを話すと逆に信頼性を失い、大きなマイナス評価につながります。
例えば「医療ボランティアに参加した」と嘘をついた場合、活動の様子について深掘りされた際に具体的な回答ができず、不自然さが露呈してしまうでしょう。
一方で、自分の経験や考えを正直に話すことで、たとえ小さなエピソードでも面接官に誠実さや熱意が伝わります。
「自分の言葉」で話すことも非常に重要です。
他人から借りた表現やネットで見たフレーズではなく、自分自身が心から納得している言葉で語ることで本物の熱意や思いが伝わります。
医学部面接では、第一印象が非常に重要です。
身だしなみとしては清潔感のある服装が基本であり、多くの場合リクルートスーツが推奨されます。
スーツはシワや汚れがないか確認し、シャツやブラウスはアイロンがけしておきましょう。
髪型も整え、派手なアクセサリーや濃いメイクは避けるべきです。
入室時にはノックをして「失礼します」と一礼しながら入室し、椅子に座る際には「よろしくお願いいたします」と丁寧に挨拶します。
さらに、言葉遣いにも注意し、「〜っす」など砕けた表現は避け「〜です」「〜ます」といった丁寧な敬語を使いましょう。
医学部専門予備校の活用は、面接対策においても非常に有効です。
面接においても医学部受験に特化した指導が受けられるため、一般的な予備校よりも対策が充実しています。
模擬面接の機会が豊富に用意されており、実際の面接形式を想定した練習を繰り返すことで、本番での対応力を高められるでしょう。
面接対策だけでなく、各科目や小論文対策も行ってくれます。
志望校の傾向に合わせた授業により、弱点を克服しながら効率的に学べます。
なお、講師陣が医学部受験に精通しており、個々の生徒の弱点や課題に応じた指導が行われる点も大きなメリットです。
一方で、学費が高額になる場合があるため、費用対効果をよく考慮して自分に合った医学部予備校を見つけることが重要です。
面接は「準備8割・本番2割」といわれるように、事前の準備が大切です。
頻出の質問を把握し、自分なりの答えを準備してみましょう。
面接本番の雰囲気のなか、実践的な練習を積むことも大切です。
模擬面接を通じて自分の回答をブラッシュアップし、緊張感や時間管理に慣れることで自信を持って本番に臨めるはずです。
なお、医学部予備校を利用すると効率的に面接対策を行えます。
独学での面接対策に不安がある方は予備校の活用も前向きに検討してみましょう。