医学部受験の理科選択では生物と物理どちらを選ぶべき?

公開日:2021.09.24 更新日:2023.11.30
医学部受験の理科選択では生物と物理どちらを選ぶべき?

医学部は私立・国公立大学とも英語・数学・理科の3教科4科目で受験します。
ほとんどの大学で理科は化学・生物・物理の中から2科目を選択して受験しますが、このうち多くの学生が化学を選択し、もう1科目を生物で受験するか物理で受験するか悩むと思います。
受験するに当たって生物と物理のどちらが有利か、大学入学後にアドバンテージになるのはどちらかなど、様々な観点から自分に合う科目選択のヒントを見つけて下さい。

 

医学部受験の理科は何科目必要?

医学部の受験では理科は基本的に4科目の中から2科目を選択して受験します。
ちなみに4科目とは化学、生物、物理、地学ですが、このうち地学は履修できる高校や受験できる大学は限られます。

そして基本的に多くの受験生が1科目は化学を選択するため、もう1科目に物理が生物を選んで試験します。
入試制度の上では、どの組み合わせでの受験も可能なため、化学を選択せずに生物・物理の2科目で受験することもできます。

しかし名古屋市立大学や九州大学、群馬大学、金沢大学など一部の国公立大学では、物理と化学が必須とされています。
また北海道大学も物理が必須とされているため、志望校選択時には十分注意が必要です。

一方、理科を1科目で受験できる大学もあります。
東海大学や帝京大学は理科1科目での受験ができるため、どうしても医学部を突破したいという人や、理科が苦手で学習時間が足りないという場合には、大きな助けになるかもしれません。

高校での履修科目選択時に、生物か物理かで迷う人も多いと思います。
志望校の受験要項や、各科目の内容、特徴を踏まえ自分がどの科目を選択すべきか検討する必要があります。

 

医学部受験の理科はどの科目を選択した方がいい?

医学部受験の理科では、多くの大学で2科目選択での受験なので、ほとんどの受験生が化学を選択し、もう1科目を生物か物理かで悩みます。

入試制度上は生物と物理での受験も可能ですが、多くの受験生がそうしないのには理由があります。
まず、生物も物理も、化学と内容がリンクする部分が多いため、化学を背景知識として生物も物理も理解がしやすくなるという点です。
また医学の勉強においても化学の知識は重要になるため、化学を十分勉強せずに医学部に合格した場合、きちんと学習してきた学生との差を感じるかもしれません。

次に試験の難易度です。
理科は科目の組み合わせを問わず、2科目を120分で受験します。
試験の難易度は年度により変わりますが、化学、または生物か物理のいずれかの難易度が高く、他方が易しいという傾向があります。

仮に多くの受験生が選択する化学の試験内容が易しかった場合、生物と物理の組み合わせで受験した少数派の学生は難易度の高い試験を2科目受験することになり、圧倒的に不利になります。

こうした理由から基本的に多くの学生が化学を固定とし、生物か物理を選択しますが、さらにその中でも物理を選択する学生が多い傾向にあります。
これは医学部の受験において要とも言える数学を勉強することにより、公式を本質的に理解できていれば、物理は得点をとりやすく満点を取れる可能性もあることが理由でしょう。

 

生物、物理のそれぞれの特徴とおすすめする人のタイプ

理科の科目選択で悩む人もたくさんいますが、それぞれの科目の特徴を紹介します。

 

生物の特徴と選択するのにおすすめの人

生物は数学や化学のように本質を理解することで解答できるという科目でもありません。
そのため安定的に高得点を狙える科目ではありませんが、複雑な計算問題が無く独立した問題も多いため、連鎖的に複数の問題で失点するリスクが低いと言えます。
ある程度勉強をしていれば合格圏内の点数を十分に狙えます。

また生物は思考力と考察力が求められる科目です。
さらに記述式の問題や考察問題が多いため、長文になる問題文をきちんと読む読解力と、記述力も重要です。
初見の問題も多いですが、与えられた資料をきちんと読み解き、問題文中で提示された条件を読み落とさなければ、背景知識が無くても解答できる問題もあります。

これらの理由から国語や小論文を得意とする人にはおすすめですし、また数学や計算が苦手な人にとっても安全策として生物選択がおすすめと言えます。

 

物理の特徴と選択するのにおすすめの人

物理は理科の科目の中では、暗記項目が少ないのが特徴です。
その反面、数学的要素が強くなぜそうなるのか、なぜその公式を使うのかという本質的な理解が重要な科目です。

また難易度が上がれば上がるほど、正確かつスピーディな式変形や微分・積分、ベクトルの知識の応用が求められます。
そのため数学が得意な人、またある程度理解ができている人にとっては、得点源になるおすすめの科目で、満点を取ることも不可能ではありません。

 

生物選択のメリット・デメリット

医学部を受験する学生の中では、化学と物理を選択する学生が約70%なのに対し、化学と生物の組み合わせで受験する学生は25%程です。
生物選択のメリットとデメリットを紹介しますので、科目選択の参考にして下さい。

 

メリット

生物は、化学や物理と比較して暗記量の多い科目です。
また物理のように数学的要素が無く、考察力や記述力が重要です。

そのため暗記を含め、勉強した分だけ得点につながり、安定的に得点が取れる科目です。
生物を本質的に理解することは困難なので、物理のように満点を狙える科目ではありませんが、特に数学を得意科目と位置付けていない人、文章を読み解くことや小論文などの記述に抵抗の無い人には、おすすめです。

 

デメリット

生物はメリットでも紹介した通り、暗記項目が多くそもそも知っていなければ解答できない問題が中心です。
さらに暗記だけではなく、与えられた実験データを元に、覚えた知識を使って考え、記述する論理的思考力が求められるため、高得点を取りにくい科目です。

しかし医学部合格で重要なのは、満点や高得点を取ることより合格ラインに達することなので、生物を選択する上での特筆すべきデメリットとは言えないでしょう。

そのため数学が得意なら、迷わず物理を選択する方がおすすめですが、逆に数学が苦手な人、数学の勉強だけで手いっぱいな人にとっては、安全策として選択すべき科目と言えます。

生物を選択する方は勉強方法も確認しましょう。

 

物理選択のメリット・デメリット

医学部の受験においては、多くの学生が理科の科目のうち化学とともに物理を選択しています。
数学の要素が多く、リンクする部分が多いというのも理由の1つですが、メリットとデメリットそれぞれを理解した上で、科目選択の参考にして下さい。

 

メリット

物理は暗記量が少ない科目です。
一方で数学的要素が強く、本質的な理解が重要な科目でもあります。
そのため数学が得意な人、またなぜこの公式を使うのかという本質をきちんと理解できる人には、高得点を取りやすく、共通テストや中堅レベルの私立大学では満点を取れる可能性もあります。

また生物と比較して物理選択者の方が多いため、参考書や問題集が生物よりも充実していて、自分にあった1冊を見つけやすいという、学習する上でのメリットもあります。

 

デメリット

医学に密接に関連した科目ではなく、生物と比較した場合、大学入学後においても大きく関連する点が少ないと言えます。

またメリットで触れた通り数学的要素が強く、難易度が上がれば上がるほど、この傾向は強くなります。
計算ミスによって複数問題を一気に失点するリスクもあります。
理科は2科目を120分で受験するため、計算スピードや処理スピードに自信が無いと、物理に時間を取られ、化学にも影響を及ぼす可能性もあります。

物理を選択する方は勉強方法も確認しましょう。

医師の観点からみた入学後に有利な科目は?

医学部受験時に生物と物理のどちらを選ぶべきか迷っているなら、入学後の大学の授業や医師となった先のことを考えてみるのもおすすめです。

受験時に生物を選択する学生は、物理選択者よりも少数ですが、実は入学後に有利になるのは生物選択です。
医学部入学後には、多くの場合1年次に理科3科目を履修します。
ここで生物を勉強してこなかった人の多くは、膨大な学習範囲と暗記量の多さに苦労します。

では逆に生物選択で受験した人は、大学の物理の授業で苦労するかというと、そうではありません。
大学では生物は全員共通で履修しますが、物理は既習と未習でコースが分かれることがほとんどです。
物理を学習してこなかった人も、基礎から学ぶ機会があり、また暗記量の多い科目ではないため、大学入学後からでも十分についていくことができます。

また医師の観点から見ても、生物選択はおすすめです。
それは人間という生物を扱う学問が医学であり、大学の専門課程で履修する分子生物学や発生学などの生物学を始め、免疫学や神経科学、病気の仕組みを知るための病態生理に解剖まで、全てにおいて生物の知識が不可欠だからです。

生物選択者が大学入学後の勉強がスムーズというだけでなく、長い目で見れば生物の知識をきちんと持っておくことはとても重要なことだと言えます。

 

まとめ

医学部を受験する際の理科選択では、多くの受験生が化学と物理を選択していて、これは医学部を目指すに当たって要と言える数学を学習することから、物理選択の方が学習効率が良いという理由が大きいようです。

生物も物理もそれぞれにメリットがあり、大学入学後にはどちらの科目もさらに高次元な勉強が必要です。
医師を目指す以上は生物に興味を持ってほしいと思いますし、医学に生物の知識は不可欠ですが、一方で物理を勉強することで、医師として重要な俯瞰的に物を見る力や個別の情報を抽象化して全体として捉える訓練ができます。

どちらも受験において、また医師となってから必要になる知識や素養が詰まっていますが、まずは大学に入学しなければ、医師への道は開きません。

医学部合格という点で、自分にどちらの科目が合っているのかを、十分検討して決めてほしいと思います。
その一助になれば幸いです。

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