医学部の受験に向けてのはじめの一歩は、志望する大学(医学部)を決めて入試の特徴に合わせた対策・スケジュールを練ることです。医学部は、国公立・私立ともに、学校ごとに受験科目や配点が異なるので、自分の得意な教科・科目の配点が高い大学を知ることで、合格率を高められます。今回は医学部受験に向けて知っておきたい国公立・私立大学の受験科目の仕組みと傾向、効率よく受験科目を対策するための方法を紹介します。
目次
国公立大学の医学部入試は、前期日程・後期日程ともに、毎年1月に行われる「大学入学共通テスト(大学入試センター試験)」を必ず受ける必要があります。
一般的な国公立大学医学部では、共通テストの受験科目は「国語・外国語・数学・理科・社会」の5教科で、数学、理科、社会は下記のように科目選択にある程度決まった傾向があります。
教科 | 科目 | 備考 |
外国語 | 外国語…「英語」「ドイツ語」
「フランス語」「中国語」「韓国語」 から1科目選択 |
・筆記+リスニング ・「英語」が必須の大学あり ・科目が指定の大学あり |
数学 | 「数学Ⅰ」「数学Ⅰ・A」「数学Ⅱ」
「数学Ⅱ・B」「簿記・会計」 「情報関係基礎」から2科目選択 |
・「数学Ⅰ・A」と「数学Ⅱ・B」が
必須の大学が多い |
理科 | 理科1(「物理基礎」「化学基礎」
「生物基礎」「地学基礎」)、 理科2(「物理」「化学」「生物」 「地学」)から選択方法により 科目を選択解答する |
・「物理」「化学」「生物」のうち
2科目選択の大学が多い |
社会 | 「世界史A」「世界史B」「日本史A」
「日本史B」 「地理A」「地理B」「現代社会」 「倫理」「政治・経済」 「倫理+政治・経済」から1科目選択 |
・「倫理+政治・経済」
「地理B」「日本史B」 「世界史B」から1科目選択の 大学が多い |
例として、前期日程の共通テストの理科で受験科目に特色のある大学を挙げてみます。東京大学・金沢大学・信州大学・愛媛大学の理科では、表で紹介した8科目に加えて「地学」も選択できます。
また、名古屋市立大学・佐賀大学は「物理・化学」の選択が必須となっています。
このように、各大学によって選択できる科目に違いがあるので、自分の得意な科目が活かせる大学がないかチェックしてみましょう。
国公立大学の二次試験(個別試験)は、前期日程は「英語、数学、理科2科目の3教科4科目+面接」が基本です。共通テスト同様、理科と社会の選択科目が独自の大学があり、小論文や調査書が必要な大学もあります。
また、多くの大学で面接が必須となっているので、面接対策も同時に行う必要があります。
後期日程の二次試験は、英語や数学、理科などの学科試験がある大学と、学科試験+面接、面接のみ、面接+小論文、小論文のみ、なかには二次試験を行わず共通テストの得点のみで合否を決定する大学など様々です。前期日程と異なり学科試験が不要な大学も多いのが特徴です。
二次試験で学科試験が不要の場合は必然的に面接、小論文の出来が合否に大きく影響するので、該当する大学の後期日程を受験する可能性があるなら早めにスケジュールを立てて対策しておくことが重要です。
私立大学医学部は個別試験のみの大学が多くなっています。一次試験は記述式またはマークシート方式で「外国語」「数学」「理科2科目」の3教科4科目の受験科目+「面接」「小論文」が中心です。
4科目の配点は一律の大学もあれば、英語の配点が高め、英語と数学の配点が高めなど大学によって配点に特色があり、面接と小論文は点数化している大学としていない大学(評価段階の参考資料とする大学)があります。
二次試験は「小論文」と「面接」が中心です。グループ面接を実施する大学や複数の面接を実施する大学もあるため、志望校の試験内容を事前に把握することが重要になります。
私立の医学部でも共通テストを利用して受験できる大学があります。一次試験に共通テストを利用できるので、国公立との併願が楽になります。
参照する教科、科目は大学ごとに違いがあり、「英語・数学・理科」「英語・数学・理科・国語」「英語・数学・理科・国語・社会」のいずれかが受験科目になっています。
例外として、共通テストを併用して一次試験を実施する日本医科大学は、共通テストの国語の点数のみを参照します。
国公立大学医学部合格には、共通テストのボーダーが85%以上とも言われます。そのため、まずは共通テストのボーダーを超えられなければ、二次試験に進めません。共通テスト対策は、数学、理科の4科目のうち2科目は得意科目を持ち、常に高得点が取れるような状態に仕上げるのが理想です。
また、大学ごとの科目選択の特徴を把握して、得意な科目で受験できる大学に焦点を絞るのも1つの方法です。特に理科や社会の得意科目で受験できる大学なら、数学、英語により時間を割けるので、得点率がアップしやすくなります。
国公立大学医学部の前期日程の二次試験は英語、数学、理科に加えて「面接」が必須です。中には学科1科目より面接の配点が大きい大学もあります(例:筑波大学)。志望大学の面接の配点比率をチェックして、配点が大きければ早めに力を入れて対策しましょう。
国公立大学医学部の後期日程の二次試験では、「面接」に加えて「小論文」を課す大学も少なくありません。小論文は大学ごとに出題形式や評価ポイントが異なるので、過去問や似た問題集などに集中して取り組み、どんな題材が来ても慌てずに思考・論述できるようにしておくのが理想です。
私立大学の一般選抜の場合は、共通テストがない分の負担は減りますが、その分受験大学に合わせた試験対策が十分に行えているかが大きなポイントになります。例えば、帝京大学の一般選抜一次試験は、英語が必須で国語・数学・理科から2科目を選択して合計3科目とする方式になっています。つまり、多くの大学で必須の数学や理科なしでも受験できるということになります。
大学ごとの試験の方式や傾向、配点を事前に把握することで、効率的に学習を進められます。
共通テストを導入している私立大学は増えてきていますが、一般入試と比較すると募集人数が少なめで合格のハードルが高めの大学が多くなっています。国公立大学と異なり、3教科(英語・数学・理科)の成績のみ参照する大学もあるので、まずは5教科のうち英語、数学、理科にしっかり取り組み、3教科の実力がついた段階で国語、社会に進むように学習することで、国公立と私立の両方に合った対策となります。
AO入試とは「アドミッション・オフィス入試」の略で、現在は「総合型選抜」と呼ばれています。推薦入試は、2021年から「学校推薦型選抜」と呼ばれています。
それぞれ、「その大学で学びたいという意欲」「大学への適正」や「学力だけで測れない個性や能力」などを評価するのが特徴です。出願の対象となるには決められた評定平均値のクリアが求められる大学が多くなっています。
また、卒業後に地域の医療期間で勤務や研修が約束できるか(地域枠)、という条件も多くなっています。自分に合った募集要項かをしっかりチェックして、出願資格に合致していれば受験機会を増やすことで合格の可能性が高まります。
志望理由書や自己推薦書の提出の他、共通テストの成績も参照する大学、小論文や面接、学科の総合問題を課す大学など大学によって特色のある試験内容となっているため、受験する場合は早めに過去問をチェックして、一般入試と合わせて対策できるようスケジュールを組みましょう。
医学部合格は、やみくもに問題を解くだけでは実現できません。まずは自分の今の状況から「自分に合った志望大学、自分に必要な勉強」を把握し、逆算して受験勉強のスケジュールを立てるところから始めましょう。一般的には受験年の前年3月頃から受験勉強がスタートします。ここからの1年間を、まずは3つの時期に分けて大まかなスケジュールを立てていきましょう。
■3月~8月…受験勉強スタート期
まずは基本を総復習し、どの学校でも出題される標準問題を中心に取り組む。
■9月~11月…受験勉強中間期
基本が身についているか、演習問題を繰り返してチェックしていきます。抜けていた部分や苦手分野は集中的に取り組みます。また、集めておいた志望校の過去問にも取り組みます。
■12月~2月…追い込み期
追い込み期に入ったら、志望校の過去問演習を中心に行います。国公立受験の場合は共通テスト対策も同時に行います。共通テスト後の二次試験対策をどう進めるかも考えておきましょう。
ただし、学校推薦型選抜などは11月には出願や選考がはじまるので、スケジュールも前倒しに組んでいく必要があります。
今回は、国公立と私立の医学部の受験科目の傾向と対策を紹介しました。何よりもまずは、自分が受けたい大学の試験傾向を把握することが、効率の良い受験対策の第一歩になります。
そして、自分が受けるべき大学で迷った時や勉強計画が立てられない時は、自分がどの大学に行きたいのか、よりも「どんな医者になりたいのか」「将来医療現場でどんな活躍がしたいのか」という目標を明確にするようにしましょう。目標を改めて自分の中で確認することで受験勉強へのモチベーションが上がりますし、情報収集にもムダがなくなります。ぜひ参考にしてくださいね。